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『いちごの目覚まし時計』 第1話「想い入れはお花畑のように」 [♂2 ♀1 N/A0]

キャスト

 ♂2  ♀1  N/A 0  計3人

 佐々ノ木竜(ささのき・りゅう) ♂ 天涯孤独の天才掃除屋(殺し屋)。
 峰富貴子(みね・ふきこ) ♀ 年齢不詳 正体不明 B99.9 W66.6 H88.8(cm)
 マスター ♂ 30~40代 正体不明

発表用テンプレ
佐々ノ木():峰富貴子():マスター()



マスター「いらっしゃいませ。「いちごの目覚まし時計」へようこそ。今回は第1話「想い入れはお花畑のように」でございます。尚、R15指定に抵触する表現を含む場合がございますので、15歳以下の方は上演・観劇をお断りしております。ご了承下さいませ。ではどうぞ、こちらのお席へ。」

佐々ノ木「メーカーズマークをロックで」

マスター「かしこまりました」

峰富貴子「あら、遅かったじゃない。竜(りゅう)クン。今日はもう来ないのかと思っていたわ」

佐々ノ木「ハマの風が俺をここへ誘ったのさ」

「ここは神戸よ。お仕事うまくいかなかったの?」

佐々ノ木「もしそうだとしたら、俺はここには来られないはずだ。掃除屋はターゲットを消し損ねた場合、依頼主に消される運命にある」

「そうね。あなたに限ってそんな事はありえないわ。神戸清掃局員にして日本一の掃除屋、佐々ノ木竜。あなたを恐れて海外へ高飛びする人も多いのよ。」

佐々ノ木「公務員であるが故(ゆえ)、共済年金にも加入済みというわけだ。」

「竜クンは老後も安心ね。うらやましいわ。でも、今日はなんだかいつもと違う。何かあったの?」

佐々ノ木「いつもと同じだ」

「そう・・・?顔色も良くないわ。」

佐々ノ木「・・・今日のターゲットは一組のカップルだった。彼らの仕事は鍵師(かぎし)。」

「手ごわい相手だったの?」

佐々ノ木「何のことはない。使った銃弾は2人で1発だけだ。しかし最後に言い残すことは無いかと問うと、彼はこんな話をした・・・。」

「なぁに?」

佐々ノ木「ビーナスブリッジという歩道橋を知っているか?諏訪(すわ)山という山の中腹(ちゅうふく)にある。街を一望できる、山の稜線(りょうせん)から少し飛び出した歩道橋だ。」

「神戸の女の子はみんな知っているわ。あの歩道橋に恋人との名前を書いた南京錠をかけるのが、みんなの憧(あこが)れなのよ?」

佐々ノ木「それだ。輝く神戸の街を見下ろしながら南京錠にふたりの名前を書き、あの橋の欄干(らんかん)にかけておくと二人は結ばれるという・・・。」

「わたしと竜くんのも留(と)めておこうかしら?」

佐々ノ木「ばか言え。今回のターゲットの彼もご多分にもれず、ある日彼女と鍵をかけに来たというわけだ。しかし、彼の目に入ったのは・・・」

「おびただしい数の南京錠ね。景観(けいかん)を損ねると言って、嫌う人もいるのよ」

佐々ノ木「彼は傷ついた。自分が人生の生業(なりわい)と思っていた鍵、人の財産や秘密を鮮やかにそこへつなぎとめておくその鍵が、あまりに多く集まっていると・・・」

「集まっていると・・・?」

佐々ノ木「・・・キモ・・かったんだそうだ。」

「・・・・・。」

佐々ノ木「以来、彼と彼女はおびただしい数の鍵を少しでも外そうと、夜な夜なビーナスブリッジに現れては、恋人達がかけていった鍵を、お得意の鍵破りで開錠し処分していたという。元あった、鍵のかかる前のビーナスブリッジに戻したいという一心でな・・・」

「鍵屋さんらしいわね。鍵屋さんならすぐに開けられるのでしょう?」

佐々ノ木「これはまた別の鍵師から聞いた話だが、南京錠というのは非常に頑丈だ。ちょっとやそっとでは破壊できん。つまり正攻法でしか開ける事はできん」

「正攻法?・・・壊すのではなくて、正しい手順で開けるということね?」

佐々ノ木「いや、ガチャガチャする」

「ガチャガチャ?」

佐々ノ木「そうだ。ガチャガチャする。二人は毎晩ガチャガチャした」

「そうなの・・・・・。でも、せっかく恋人達がかけた鍵をはずしてしまうのはちょっと悲しいわね」

佐々ノ木「悲しいなんて、そんな複雑な感情は俺にはわからない。だが、これを快(こころよ)からぬと思う人間がいた。彼もまた鍵師だったんだ」

「依頼者なの?」

佐々ノ木「そうだ。俺にこの2人の始末を依頼してきた彼もまた、鍵を扱う人間だった。それもビーナスブリッジのふもとで南京錠を売る鍵師だ」

「商売敵(しょうばいがたき)というわけね・・・」

佐々ノ木「鍵を売る鍵師と、鍵を外す鍵師。彼らの利害は合わなかったというわけだ。誰が言い出したか知らんが・・・うかれたバカな噂のために汚れていく景観を見ていられなかった鍵師がいた・・・。そして彼らは強欲(ごうよく)なマーケットプランナー・・・つまり南京錠を売っている鍵師のなわばりに踏み込み、依頼を受けた俺の手によって消された。ただそれだけの事だ。港からそよぐ風を感じながら、彼は最後にこう言った。鍵はいつか必ず外されるものだ、と。」

「竜くん・・・いつからそんな話を、涙も浮かべずに話すようになったの・・・?」

佐々ノ木「涙なんか遠い昔に枯れちまった。・・・でもな、鍵を外していた鍵師の言うとおり永遠の愛もなければ、永遠の南京錠もこの世には無い。必ず外れちまうってのも正しい気がした。・・・俺は彼らを始末した後、ビーナスブリッジへ向かった。歩道橋のたもとで南京錠を買い、始末した2人の名前を書いて、橋の欄干にそっとかけた。」

「悲しい話ね・・・」

佐々ノ木「悲しいだなんて、複雑な感情は俺にはわからない。マスター。」

マスター「ありがとうございました。870円でございます」

佐々ノ木「俺はこれから人を始末した数だけ、あの橋に南京錠をかけようと思う。もちろん依頼者とターゲットの名前を書いてな。・・・俺なりの弔(とむら)いだ。」

「竜クン・・・・・本当に最低だわ」

佐々ノ木「・・・また来る」

マスター「本日はご来店、ありがとうございました。」

「・・・マスター、もう一杯作ってくださる?」

マスター「はい・・・・・。殺し屋の悲しい性(さが)ですか」

「そんなキモチ、わからないわ。・・・・ぐすっ」

マスター「どうぞ」

「・・・・・・バカ。」

 


(つづく)
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コメント 2

なるほど。
続きがきになるぞ。
by (2005-08-03 16:03) 

ペガサス・ペン

才オォ(。゚Д゚)ォオ才
820さんにniceをいただけるとは。
ありがとうございます。
by ペガサス・ペン (2005-08-04 01:07) 

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